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サッカーの原点はドリブルにあり  

◆サッカーの原点はドリブルにあり
  井田勝通・静学スタイルp116

「日本で誰もやったことのないサッカーで勝とう!」
 そう思って学園でテクニックを磨き上げてきた俺の存在が日本全国に広く知れ渡ったのが、これまでにも何回か話している昭和51年度の高校選手権決勝・浦和南戦だった。それまで大阪の会場で行われていた選手権であったが、その時は東京開催となった初の大会であった。現在は2020年東京五輪のために改修されている国立競技場の観客席が満員になる中、ベンチに座った時の晴れやかな気持ちと緊張感は今もよく覚えている。
 松本暁司監督率いる浦和南は6回目の全国大会出場で、2年連続3度目の優勝を目指していた。彼らのフォーメーションは4ー3ー3のスイーパーシステム。それが当時の日本サッカー界の主流だった。
 対する学園はダブル・エム・システム(3-4-3)。中盤では4対3の数的優位になるから、相手はマークしきれずに困る。そこでボールを保持して、自分たちのテクニックとショートパスを使いながらゴールを狙おうと俺は考えたんだ。
 相手はその思惑を封じようと、キックオフの笛とともにハイプレスからカウンターを狙ってきた。開始1分に加瀬治に先制点を奪われ、5分にも水沼貴史(現解説者)から筋野弘美にタテパスがつながって2点目を取られた。さらに17分にはCKから加瀬のジャンピングヘッドで3点目が入って、開始20分も経たないうちに3点差をつけられてしまったんだ。
 ウチはGKの森下、ディフェンシブハーフの杉山誠・実兄弟、右ウイングの宮原真司に、スーパーサブの成島徹と登録メンバーに5人も1年生が入っていて、過去に感じたことのない緊張感で混乱した部分はあったと思う。だけど、3点を失ってから逆に落ち着きを取り戻したのか、自分たちのスタイルに立ち返ることができた。前半のうちに宮本昭義がヘッドで1点を返して1ー3で前半が終わった。
 俺は「まだまだイケる」と自信を持っていた。
 だけど、後半開始早々に4点目を食らってしまった。再び3点差になったのは痛かったが、それでも俺たちは諦めなかった。スコアが4ー2、5ー2、5ー3と目まぐるしく変化する中、時間が経つにつれて、学園らしい地に足がついた戦い方ができるようになっていったんだ。
「ゆっくり攻めろ」
「もっともっと落ち着いて、ゆっくりやれ」
 俺はどういう状況になっても動じることなく、自分のポリシーを貫こうと思ったから、選手たちにこう言い続けた。
 ゆっくりとボールをキープできる状況では、ボールを保持しながら攻める。ドリブルで攻め込み、足技で相手を抜き、相手のスキを見つけるやゴールを狙う。そういう戦い方を最後までやり続けたんだ。
 そして後半37分、宮本が蹴ったFKに杉山茂が鋭く反応してシュート。このこぼれ球を拾った宮原が振り向きざまに2度目のシュートを打ち、学園はとうとう4点目を手に入れる。残り3分で1点差に詰め寄られたことで、松本監督は明らかに動揺し、冷静さを欠いていた。
 結局、その1点のビハインドを跳ね返卞ことができず、試合は4-5のままタイムアップの笛。歓喜の雄叫びを挙げる浦和南の選手たちの傍らで、学園の選手たちは敗者としてピッチに倒れこんだ。
 俺自身も悔しさはもちろんあった。が、一方でこれだけの名勝負を初の大舞台で演じきれたことも清々しさも感じていた。選手権でこんな試合をした高校サッカーのチームは過去に1つもなかったからだ。「ドリブルと遅攻」という俺たちのスタイルは正直言って、多くの関係者から異端の目で見られた。すでに話したように、「スピードがない」「守備をおろそかにしている」「夕テヘ急ぐスタイルを冒涜している」などと、さまざまな批判が俺の耳にも届いた。賛否両論はあったが、日本中が注目する大一番で絶大なインパクトを残しだのは事実だと思う。

 当時の日本では、浦和南の松本監督や帝京の古沼(貞雄)監督がやっていたように、ボールをもらうとすぐに前やサイドに蹴り出す傾向が非常に強かった。
「できるだけ早く、相手ゴールへ行け!」
 これが大方の監督の考え方だった。
 しかしながら、サンパウロFCやフラメンゴなどのブラジル強豪クラブは、必ずと言っていいほどドリブルで前進していたんだ。
 前方にオープンペースがあれば、ドリブルしている選手はフリーでボールをキープできる。ドリブルをすることによって、敵に肉体的、精神的、心理的に強いプレッシャーもかけられる。その効果は絶大だ。
 さらに言うと、ドリブラーは自分で相手を抜く、あるいはサポートに近づいてきた味方とワン・ツーを使って相手をかわす、という2つの選択肢を持てる。自分がドリブルしていて、相手DFが自分に寄せてプレッシャーをかけてきたのなら、味方がフリーになるのだからワン・ツーを使えばいい。逆にワン・ツーを使うと見せかけるフェイントを入れることで、より効果的に敵を抜き去ることもできる。
 ドリブルとは、極めて有効な攻めの手段なのである。
 とはいえ、実際の試合ではこういう説明の通りにはいかないことも多い。ドリブルをしながら、走っている味方にパスを出し、リターンを受けて相手をかわし、前進していくというのはうまくいかない時もある。スピードが速くなる分、テクニックも高度になる。テクニックが未熟であれば、失敗する確率も高くなる。
 だからこそ、ドリブル、パス、トラップ、ランニング、間合いの取り方、味方とのコンビネーションといった要素を徹底した練習で積み重ねていかなければいけない。
 特にドリブルとボールコントロールは全てのベース。南米の一流チームも、まずボールをもらったら落ちついてドリブルで前進している。それが「華麗でグッドなフットボール」につながると俺は確信したんだ。
 ドリブルができなければサッカーは成り立たない。そう言い切ってもいいくらいの重要な要素なんだ。
 たとえば5対5のゴールありのミニゲームを考えてみよう。
 1人の選手がドリブルでマークを外したら、フリーになったその瞬開がパスを出す絶好のタイミング。そこでボールを持っている選手がパスを出すと同時にオープンスペースにダッシュする。ワン・ツーの受け手側もリターンパスを出せるかどうかを瞬時に判断する。
 ここでポイントとなるのが、いい加減な判断をするのではなく、冷静かつ客観的な目を持つことが大切だ。  2人がそういうふうに動いた時、敵はリターンパスをカットしようと動いてくるはず。その出方を見ながら、出し手はリターンを出さずにドリブルでそのまま前進してもいい。 こういうトライを繰り返していくことで、攻撃側はドリブルやパスが不正確になったり、ボールを奪われることもなくなる。
 ドリブルを軸にして、ワン・ツーやトライアングルパスなど応用力を高めていけば、華麗で理想的なフットボールに近づいていく。
 1対1で抜くことを手始めに、2対1、3対2と人数を増やし、より実践的な内容にレベルアップさせていけば、選手たちも楽しいサッカーを好きになるだろう。最初は誰もがうまくはいかないから、無理をさせずに横パス、バックパスを使わせてもいいが、徐々に実戦を想定した内容に変化させていくべき。それを本当の試合の場で成功させられれば、選手たちは攻撃サッカーの魅力の虜になるはずだ。
 浦和南と選手権史上に残る名勝負を演じた選手たちも、みんなそうだった。
 ボールをキープし、ドリブルで突破することを覚えることは、サッカーの醍醐味を知るための必須条件。そう俺は確信している。
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カテゴリ: H30 その他

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